しぇり嬢の冒険者手帳

MMOTRPG「QuestNotes」に関する内容を主に扱います。

【SS】氷の剣姫が微笑うとき。

 こちらの企画に乗らせていただいたものです。

文章創作があまりにも苦手なので御見苦しい部分ばかりだと思います。

ほとんど自分用のメモとしてこちらへ。

 

「はい、よろしくお願いいたします」
透き通ったベージュ色の髪に、赤いルビー色の瞳。
容姿端麗な彼女は、無感情な笑顔でこちらに会釈した。

"蛮族退治"。
何の変哲もない依頼だが、他に手隙の冒険者が居なかった為、俺は彼女とそれを請けることになった。
こんな美人さんに掠り傷一つ付けさせるものか。俺一人でさっさと解決してしまおう。
――と、いけない。浮かれた様子を見られてしまったかもしれない。
照れ隠しに「さあ、出発しましょう!」と声を発した頃には、彼女は既に宿の出口に手を掛けている最中だった。


――冷たい。そして、硬い。
寝相が悪すぎて、気づかぬ間にテントの外に転がり出てしまっていたのだろうか。
――いや、そんな安らかな夜ではない。
剣戟は尚も繰り広げられている。
俺の手から放たれた松明が、暗がりの洞窟を淡く照らしている。
床には自分自身の。壁には奴らの鮮血が、鈍い赤模様を作り出している。

小鬼の集団にしてはやけに統率が取られていた。だから俺は不意を打たれ、この有様だ。
彼女はそれを往なし、俺の頭をどついた小鬼に一太刀浴びせ、続く残りの小鬼も斬り伏せた。
そして、事前情報では知らされなかった魔物――小鬼の首領、オーガと対峙している。


――貴女はどうして冒険者に?――

――弱き者は屠られ、強き者が勝ち残る――
――そんな世界の掟は、果たしてどこまで通ずるのか。私はその高みが知りたい――


ここにやって来るまでに交わした会話。
初対面の面子では慣例とも言えるようなやり取りだが、彼女の奇妙な答えには衝撃を受けた。
その答えだけではない。それまで無感情な振舞いだった彼女が、何か愉しげに返事したように思えたから強く印象に残った。

一緒に旅に出た仲間だし、少しは俺の状況も気に掛けて欲しかったが、最早、俺の事など眼中に、その頭にさえ無いように思えた。
弱き者は屠られ、強き者が勝ち残る……か。
俺もまた、屠られる側だった。ただ、それだけの話なのだろうか。
段々と遠のく意識の中、強敵と得物をぶつけ合う彼女は愉しげに笑っていた。